俺はまだ本気出してないだけ

http://www.oremada.jp/
日活100周年の記念作品らしい。つまり、日活はまだ本気出してないだけ、ということなのだと宣言したに等しい。以下ネタバレ含む。


んー、という感じ。キャスティングはとても良いだけに、いや、良かったからなのかもしれないが、どういう方向に作品をもっていくか監督が苦しんだ印象。福田監督でコメディならHKのほうが断然よかった。それは、ある方向にぶっとんでいけばそれでよい、という爽快さがあるからだと思う。

正直、この作品はコメディではない。設定はコメディタッチではあるが、コメディではない。よく考えてみろ、いい年した大人(妻なし娘ひとり)が40過ぎて会社やめて「漫画家目指す」と言って家でグータラしている、これは設定こそ「え?!」という笑いがあるが、決して明るくない。一歩間違うと、かなり暗い残念な話になる。実際、その暗い残念さを大黒シズオのどこかからしみ湧き出てくる自信でぶっとばす、というのがこの作品の良さであると思う。暗いから時に人情話があり、暗いから明るくなれる。

ただ、プロモーションのせいなのかなんなのか、この作品は堤真一が大黒シズオをやるというギャップを売りすぎた。そのせいでどうしても印象が「コメディなんだろうな」ということになり、必然的に作品も「コメディさ」をアピールせざるを得なくなった、ということなんじゃないかと勝手に想像している。これが単館系のもっと小さな映画であれば、原作のもつ暗さ、そしてそれでもそこから立ち上がる力、みたいなのをもっと出せたと思う。でも興行的にはいまいちだっただろう。

うまくまとまらないが、この作品もコメディ路線でいくのかそうでないのか迷った結果「堤真一のギャップ萌え」で1時間半突っ張るというかなり中途半端なものになっており、んー、という感じと言うよりほかない。それでも市野沢くんの山田孝之とか、変な声を出す占い師の佐藤二朗、2010年代を代表する若手銀幕女優になるであろう橋本愛、存在自体がコメディの濱田岳といった面々はさすがという演技を見せており、んー、とは言いつつも見どころはたくさんある作品だったと思う。いい役者が揃っていただけにちょっと残念。

あと、はじめて高の原のワーナーで観たのだが、ここは映画館としてはよかった。段差があって後部座席でも頭を気にせず鑑賞できる。