若手SEに、NAISTのススメ

NAIST奈良先端科学技術大学院大学)の情報科学研究科に入学してはや1年。社会人経験者で修士課程*1に入る人はそんなに多くないと思うのですが、いまのところの感想としては、「向いている人にはオススメしたい」と思っています。そこで、

  • どういう人に向いているか
  • なぜオススメしたいのか

について、自分の経験を中心に少しまとめてみようと思います。ググってこのエントリに辿りついた誰かのために。

ちなみに今年2013年は来月3月9日土曜日にオープンキャンパスがあるので、興味があって土曜出勤でない人は来てみるのもいいかもしれません。*2


【どういう人に向いているか】

  • SEとか、何かしら情報科学に携わる仕事をしている社会人で、そういう系統の学科を全く出ていない人
    • ぼくはコンピュータには昔から慣れ親しんでいたし、何かの縁でSEになり、仕事でコードを書くことはあったけれども、体系的に情報科学を学んだことはありませんでした。そういう意味ではここの大学は授業が結構あるので、復習を兼ねた勉強になりました。
    • あと、プログラミングや数学の理解程度に応じて基礎的な演習も用意されているので、ポテンシャルはあるけど全然コード書いたことない、数学は2Bまでやったけど忘れた、みたいな人も新卒、既卒問わずオススメできます。そういう人でもOKな大学院ってそんなにないので。
  • 今後の方向性として、マネジメントがどうこう、というよりは、何かしら専門性を持った技術者になりたいと思う人
    • ここに来るまでにMBAとるかMOTとるか、一応2つの選択肢をぼくは考えていました。が、費用的な問題もさることながら、そういうのを取ってバリバリやりたいわけでもないし、そういうのを取ってる指向の人は比較的身近にいそう/増えそうな気がしたので、やめました。
  • 30歳未満で独身
    • これは微妙なところなんですが、独身の方が金銭的なことも含めて、何かと身動きは取りやすいと思います。ぼくは既婚ですが・・・。ただ、結婚する前からオープンキャンパスに行ったりそういう話をしたりしていたようで、いきなり言われてビックリ!みたいなことはなかったみたいです。
  • 勉強熱心な人、自分でいろいろ勉強できる人
    • 大学院に行ったらもっといい転職先が見つかる、とかそういうことはないと思います、世情を見るに。SEだったら、自分で余暇の時間も勉強している人。何かしら研究したいテーマというのがないと大学院は行くだけ無駄だと思います*3
  • 働きながらでは時間がない、というので困っている人
    • ぼくは等価交換の法則を素直に信じて「いま必要なのは金か時間か」という選択肢で時間を取って金を捨てました。時間はあればあるとなかなか効率的に使うのは難しい面もありますが、やはりこの1年でいろいろ学んだことは、会社を辞めてなかったら気づかなかったこともありますし、いながら進めることができても、もっと時間がかかっていたこともあります。Time is Money.

【なぜオススメしたいのか】

  • 入りやすい
    • うちの大学は大学院大学なので、いろんな学校から人を取ってくる必要があります。ということで、内部進学生と入試で戦う必要がないというのはメリットです。そもそも普通の四大だと、数学とかその他の事情で、通常選抜だ受験資格にすらひっかからない可能性が高い気がしています*4
    • 英語は来年からTOEIC/TOEFLオンリーになるそうで、750なら満点。この基準を楽だと思える人には有利でしょう。ちなみにぼくは705という微妙な点で受験しましたが、全体平均は600もないらしい(500もない、のかも。詳細不明)ので、英語はできる、というのであればポテンシャルとセットで合格できると思います。
  • 入ってからフラット
    • 内部進学生だけやたらと研究室慣れしてる、研究もバンバン進んでいる、という妙な焦燥感はなくて済みます。特に、普通に理系の大学や高専から来てる子でも、けっこう専門分野を変更してきているので、スタートラインはみんな同じ感があります。
  • 費用があまりかからない
    • 大学院大学という事情もあってか、6割ぐらいの人は構内にある寮に入れます。入れれば、かなり安く過ごせますし、入れなくても1割引きぐらいで近所のURに入れます。そうでなくても、そこそこ近隣の物件なら1K3万とかそんなのはザラなので、都会の人からすれば安く暮らせます。僕は夫婦寮にいますが、1LDK40平米で管理費込12500円という破格です。逆に言うと、これがないと生活は大変。
    • 学校でTAやRAのアルバイトがあります。研究室にもよると思いますが、ちょこっと支援してもらえます*5
    • JASSOの奨学金の返還免除率が高いです。ただ、社会人経験者だと最初の1年はもらえないかも*6。今年度は追加募集があったので、ぼくは去年の10月から借りてます。
    • 授業料免除の比率も高いです。文科省の評価が高かったおかげで結構予算がついているらしいです。全額免除にせずに半額免除にして人数をたくさん出す方針らしく、これも結構な人数(掲示板の学生番号数を数えるに50人ぐらい、135人が定員なので3割以上)もらっています。ただし、これも前年収入が基準になるので初年度はぼくはダメでした。
  • 奈良、比較的便利
    • ぼくはそもそも奈良が地元で中学高校も近所だったので土地勘があるのですが、そうでなくても、大阪まで出れば何でもありますし、出なくても原付とか車があれば近所に温泉でもツタヤでも一般的なチェーンのレストランでもなんでもあります。自転車オンリーはちょっときついかもしれませんが、きっと誰かが乗せてくれるはず・・・
    • 駅まで徒歩25分、速足でも20分というのを「全然いけるやん」と思える人には向いてると思います。車なら5分。微妙に不便な感じを「研究に没頭できる!」と思えるかどうか。ぼくは妻を駅まで送迎する以外で出ることは、週1回ぐらいです*7

と、ここまで書いて思い出しましたが、JAIST(北陸先端大)は働きながら通えるサテライトを東京に用意してましたね。ぼくは関西に住居をシフトしたかったので、興味はあったけど受験まで至りませんでした。関東方面の方は、こういうのを検討するという手もあるのかもしれません。

でもぼくは何度も言いますが、お金を捨てて時間を取るという戦略にも分があると考えています*8。土日出勤を入れてWBS引くプロジェクトがペケであるように、平日仕事、夜と土日は勉強、というスケジュールにも何かしらキツいものがあるでしょう。それに対して理解が得られる環境であれば、それもよいのかもしれませんが・・・

質問あればここのコメントか、twitterでDMくだされば対応します。いつでもどうぞ。

*1:正確には博士前期課程と呼ぶ

*2:ぼくも2年前の春のオープンキャンパスに参加したクチです。あのときは震災の翌日だったのでよく覚えている

*3:ただし大卒や高専専攻科からの直接の大学院進学はそういう意味以外にキャリアアップの側面があります。これはあくまで会社を辞めて大学院に行く、という話

*4:ぼくが見たときはそうでした。学部3年編入とかなら何とかなるのかもしれませんが・・・文系からの理転はすごいハードルがあります。だから若い人にはとりあえず理系に行っておけと言いたい

*5:これは詳しいことは知りません

*6:ぼくは有給消化で5末退職だったので、4月の募集時点では申請できなかった

*7:買い物など

*8:その後、お金を稼げるメドがあれば