のどかな奈良競輪観戦記


奈良競輪場では、きのうからF1開催でS級選手が走っている。個人的には、時間が比較的あって、見たい選手がいれば見に行ってもいいかなあ、という程度なのだが、今回は今をときめく100期唯一のS級選手・窓場千加頼(まどば・ちかより)弱冠20歳が準決勝に進出し、その後ろをマークするのは奈良のベテラン大井啓世(おおい・ひろとし)46歳。こりゃ見に行くしかないと思い、奈良に引っ越してきてはじめて奈良競輪場に行ってきた。家から車で15分とかからない、近い。

15時半ごろ到着すると、F2開催よりお客さんの数はましかなあ、という程度。出走表によると、昨日は1400人ぐらい入っているらしい。まあ、そんなもんだろう。9割5分ぐらい50代以上のオッサンである。準決勝のうしろ2つを見たのだが、どちらもある意味で見ごたえのあるレースだった。

まず最初の10Rは人気の3と4が仕掛けのタイミングを失って、あとから捲ろうとするも届かず、6と接触して落車。車券は取ったのでよかったのだが、なんだかなあ、というレース。

11Rがお目当ての窓場と大井が出たレース。ダイジェスト映像だけではわからないのだが、実は発走をやりなおした。スタートのピストルが鳴ってもだれも前に行きたがらず牽制しあっているうちに2番の阿部がコケて(プロでもゆっくり自転車をこぐのは難しい)、コケたのがゴール線より手前だったので検査&再発走。このときの場内の野次が面白い。「何やっとんねんボケ」から始まり、「GIの決勝ちゃうねんからはよ出ろや!」とか「みんな帰んの遅うなるやないか、はよ帰りたいねん!」とか。2と3以外の選手は一旦控室に戻ったのだが、そのときに観客席を見ながら歩いていた大井選手はぼくの方を見て「すんませんなぁ」的な会釈をしてくれた(ような気がした)、いい人だ。

大井さん。

検査も終わり、再発走。最初に運営の人にせっつかれて場内に「すんませんでした」の一礼をした阿部がほほえましい。さて、次はすんなりスタートするのかどうかなのだが、ひとり「まどばー!!お前がポーンと出ろやー!!」と何度も絶叫するおっちゃんがいて、窓場もそれにせっつかれたのかポーンと出た。いい奴なのだが、ここでSをとったのが命とり、別線の片寄と峠に先行を封じられて何もできず、窓場は後退、見かねた大井が切り替えてオオと思うといつのまにかどのラインも滅茶苦茶になっており、大井は最後は自力でインを突くというごついレースになった。届かず5着ぐらいだったと思うが、さすがベテランという動きだった(ちなみに2着に入った戸邉も49歳の大ベテランですごい)。

最後にコケてしまった6番の山田は服の肩のところが完全にやぶけてしまっていて、立ち上がるまでに1分以上かかっていたと思うが、なんとか自転車をかついでのゴール。場内からは野次と共に拍手も出ていた。

今日改めて気づかされたのは、ぼくは競輪という競技自体が好きというのと共に、競輪場という場所の雰囲気が好きだということ。特に奈良は選手と客、開催者の一体感があってよい。と書くときれいだが、要するに警備員のオッチャンにやたらと話しかけるお客さんがいたり、警備員さんも警備員さんで配当金か何かを赤ペンでメモってたり、野次に謝る選手がいたり、野次られてやるべきことに気付く運営の人々がいたり、なんやかや。こんな奈良にガールズケイリンが11月にやってくるとはにわかに信じがたいが、ひとまず来月もF1開催があるようなので、時間があれば足を運びたい。


(8分半ぐらいから見ると、ぼくが見た10Rと11Rになります)